「アバフェルディ蒸留所紀行」
蒸留所紀行
アバフェルディ蒸留所
デュワーズ家が描いた黄金の夢
Highland Perthshire
Scotland
黄金の水が生む至高の一滴
スコットランドハイランド地方の美しきパースシャーの大地に、1898年から響き続ける蒸留の調べ。アバフェルディ蒸留所は、世界的ブレンデッドウイスキー「Dewar’s」を生んだデュワーズ家が、唯一自らの手で築き上げた聖地である。
Pitilie Burnの金色に輝く清流と、Charles Doigが設計した優美なパゴダ屋根。この地で生まれるシングルモルトは、ハチミツのような甘美な香りで世界中の愛飲家を魅了し続けている。
創業の物語
デュワーズ家の野望
1896年、既に世界的成功を収めていたブレンデッドウイスキー「Dewar’s」の創業者John Dewarの息子たち、Tommy DewarとJohn Alexander Dewarは大胆な決断を下した。品質の高いブレンドウイスキーを安定供給するため、自社専用のシングルモルト蒸留所の建設である。
兄弟が選んだ土地は、父Johnの生まれ故郷Dull村からわずか3マイルの場所。これは単なる事業戦略を超えた、故郷への深い愛情の表れでもあった。
重要年表
- 1896年: Tommy & John Alexander Dewar兄弟による蒸留所計画
- 1898年: アバフェルディ蒸留所生産開始
- 1900年代初頭: Dewar’sブレンドの中核モルトとして確立
- 現在: Bacardi Limited傘下で伝統継承
立地の優位性
- 水源: Pitilie Burn(金を含む清流)
- 交通: Perth駅への鉄道アクセス
- 気候: ハイランド地方の理想的環境
- 感情: 創業者の故郷への郷愁
建築美学
Charles Doigの傑作
アバフェルディ蒸留所の設計を手がけたのは、19世紀末スコットランド最高の蒸留所建築家Charles Doig。彼の代表的特徴である優美なパゴダ屋根は、今もなお蒸留所のスカイラインを美しく彩っている。
Doigは単なる機能性だけでなく、美的価値と効率性を完璧に融合させた設計思想で知られ、アバフェルディはその思想が結実した名建築として評価されている。
建築的特徴
パゴダ屋根
Charles Doig設計の象徴的な屋根構造
水源直結
Pitilie Burnからの直接給水システム
線形設計
製造工程に沿った効率的レイアウト
製造工程の真髄
黄金の水 – Pitilie Burn
アバフェルディの特徴的な甘美な味わいの源泉は、蒸留所脇を流れるPitilie Burnにある。この小川は名前の通り金を含む砂金の川として知られ、その豊富なミネラルがウイスキーに独特の深みと複雑さをもたらしている。
River Tayに注ぐこの清流は、数世紀にわたってこの地域の生命線として機能し、今もアバフェルディのアイデンティティの核心を成している。
発酵工程
- Larch Washbacks: 伝統的なカラマツ材発酵槽
- 長時間発酵: 72時間以上の丁寧な発酵
- 酵母選択: アバフェルディ専用酵母株
- 温度管理: スコットランド気候を活用
蒸留工程
- 高いポットスチル: パースシャーの丘を見渡す高さ
- 銅製蒸留器: 純度の高い蒸留を実現
- 2回蒸留: スコットランド伝統製法
- カット技術: 熟練職人による香味選別
味わいの特徴
ハチミツのシンフォニー
アバフェルディは「ハチミツ様の豊かさ」で世界的に知られている。この特徴的な甘美さは、Pitilie Burnの豊富なミネラル、長時間発酵、そして熟練した蒸留技術の完璧な調和から生まれる。
その味わいは、ヘザーハニーの甘さに、オークの上品な苦味、そしてハイランド地方特有のフルーティーさが重層的に絡み合う複雑な構造を持つ。
香り
ヘザーハニー
オレンジピール
バニラ
味わい
リッチハニー
モルティーネス
シトラス
フィニッシュ
ミディアム
スパイシー
ドライフルーツ
全体
バランス良好
滑らかな口当たり
上品な甘さ
商品ラインナップ
2024年終売情報
アバフェルディ12年・16年・21年は2024年に販売終了となりました。現在市場在庫のみの販売となっており、価格が高騰しています。
アバフェルディ 12年
度数: 40%
容量: 700ml
熟成: 12年以上
状態: 販売終了
アバフェルディ 16年
度数: 40%
容量: 700ml
熟成: 16年以上
状態: 販売終了
アバフェルディ 21年
度数: 40%
容量: 700ml
熟成: 21年以上
状態: 販売終了
限定品・特別エディション
アバフェルディ ミニボトルアソート
12年・16年・21年 各200ml×3本セット
¥12,980
蒸留所限定品
現地でのみ購入可能な特別ボトリング
価格応相談
ヴィンテージボトル
1990年代以前の希少ボトル
¥50,000-
Dewar’sとの絆
ブレンドの心臓部
アバフェルディは単にシングルモルトウイスキーとして優秀なだけでなく、世界的ブレンデッドウイスキー「Dewar’s」の中核を成すモルト原酒としての重要な役割を担っている。
Dewar’sの特徴的なハチミツ様の甘さと滑らかな口当たりは、まさにアバフェルディのキャラクターに由来している。現在でもアメリカで最も売れているスコッチウイスキーの地位を支える、まさに縁の下の力持ちなのである。
Dewar’s製法革新
- ダブルエイジング: ブレンド後の再熟成
- オーク樽熟成: 追加の滑らかさ付与
- 品質向上: コストを惜しまない製法
アバフェルディの貢献
- ハニー風味: Dewar’s特徴の源泉
- 安定供給: 自社蒸留所の強み
- 品質保証: 一貫した製造管理
蒸留所見学
Dewar’s World of Whisky
アバフェルディ蒸留所は「Dewar’s World of Whisky」として、世界中の愛好家に門戸を開いている。ビジターセンターでは、デュワーズ家の波瀾万丈の歴史から、現代の製造工程まで、包括的な体験が可能だ。
特に人気なのは「カスクテイスティング」で、熟成中の原酒を直接樽から試飲できる貴重な機会を提供している。
営業時間
月-土: 10:00-17:00
日: 12:00-17:00
要事前予約
アクセス
エディンバラから車で1.5時間
Perth駅から車で30分
A9道路経由
ツアー料金
スタンダードツアー: £15
カスクテイスティング: £35
プレミアム体験: £60
永続する遺産
120年以上にわたり、アバフェルディ蒸留所はスコットランドウイスキー業界の重要な一翼を担い続けている。2024年の主要ラインナップ終売により、その希少価値はさらに高まっているが、蒸留所としての活動は継続されている。
技術的遺産
- Charles Doig設計の建築美学
- 長時間発酵技術の確立
- Pitilie Burn水源の活用法
- ブレンド技術への貢献
文化的遺産
- デュワーズ家の故郷回帰
- スコッチウイスキーの国際化
- 地域コミュニティとの結束
- ウイスキー教育の推進
「品質への妥協なき追求こそが、時代を超えて愛される理由である」
— デュワーズ家の精神を受け継ぐ現代の職人たち