「白州蒸留所紀行」
白州蒸留所への旅路
~森の蒸留所が紡ぐ、清涼なる物語~
森の恵みが育んだ白州シングルモルト – 清涼感あふれる琥珀色の芸術品
南アルプスの懐深く、標高700メートルの高原に佇む白州蒸留所。82万平方メートルもの豊かな森に抱かれたこの聖地は、世界でも稀有な「森の蒸留所」として、半世紀にわたりウイスキー愛好家たちの憧憬を集め続けている。
今回の「蒸留所紀行」では、この緑深き楽園を訪ね、佐治敬三の壮大なるビジョンから生まれた白州ウイスキーの真髄に迫っていこう。尾白川の清流が奏でる調べと共に、森が息づく蒸留所の物語を紐解いていく。
森の蒸留所 – 南アルプスの麓
南アルプスの森に抱かれた白州蒸留所 – 自然と調和する蒸留の聖地
山梨県北杜市白州町、甲斐駒ヶ岳の麓に広がる標高約700メートルの高原地帯。ここは古来より「水の郷」として知られ、日本名水百選にも選ばれた尾白川の源流域である。四季を通じて冷涼な気候に恵まれ、年間平均気温は11度という理想的な環境が、ウイスキーの熟成に奇跡的な条件を提供している。
この地に息づく82万平方メートルもの原生林は、単なる景観の美しさを超えた意味を持つ。森の木々が創り出す天然の湿度調節機能、清浄な空気、そして何より静寂に満ちた環境は、ウイスキーの熟成にとって理想的な「天然の貯蔵庫」として機能しているのである。
佐治敬三の夢 – 第二の蒸留所創設
1973年 – 白州蒸留所誕生
山崎蒸留所の創業から50年を迎えた記念すべき年、サントリー二代目社長・佐治敬三の指揮のもと、第二のモルトウイスキー蒸留所として白州蒸留所が完成。
1981年 – 第二蒸留棟建設
需要の増大に応え、白州第二蒸留棟(白州2)が建設される。これにより生産能力が大幅に向上。
1994年 – 白州12年発売
シングルモルトウイスキー「白州12年」が満を持して発売。森の恵みを凝縮した傑作として瞬く間に評判となる。
2012年 – 白州25年誕生
四半世紀の熟成を経た究極の逸品「白州25年」が限定発売。日本ウイスキーの頂点を極める作品として世界的な注目を集める。
「山崎とは異なる個性のウイスキーを求めて」
佐治敬三は、スコットランドの蒸留所がそれぞれ固有の個性を持つように、日本にも複数の蒸留所が必要だと確信していた。森の中で熟成されるウイスキーは、都市部とは全く異なる表情を見せるはずだった。
— 佐治敬三の遺志より
現在の白州蒸留所データ
年産能力(リットル)
ポットスチル総数
敷地面積(㎡)
仕込み水硬度
森の調べ – 白州シングルモルト テイスティングノート
香り(Nose)
グラスに鼻を近づけた瞬間、森の朝露を想わせる清涼感が立ち上る。青リンゴとレモンの爽やかな柑橘系の香りが主調を成し、その背後にミントとハーブの清々しさが漂う。木桶発酵由来の穀物の香ばしさと、樽熟成によるバニラの甘い香りが絶妙なハーモニーを奏でている。
味わい(Palate)
口に含んだ瞬間、シルキーで軽やかな口当たりが印象的だ。南アルプスの天然水由来の清らかさが舌を包み、青リンゴとハチミツの優雅な甘みが広がる。中盤では、スモーキーさとスパイシーさが顔を出し、複雑さを演出する。全体を通して、山崎のような重厚さとは対照的な、爽快で洗練された味わいが特徴的である。
余韻(Finish)
フィニッシュは驚くほど清涼で長続きする。最初の甘みの後、ほのかなピートスモークと白胡椒のスパイシーさが現れ、最後に森のミントのような爽やかさが舌に残る。まさに「森の蒸留所」の名にふさわしい、自然の息吹を感じさせる余韻である。
「白州は、日本の四季と森の恵みが生んだ奇跡である。その清涼感は、都市の喧騒を忘れさせ、人々の心を自然へと誘う。」
— ウイスキー評論家の評
生命の水 – 尾白川の恵み
白州ウイスキーの魂とも言える仕込み水は、甲斐駒ヶ岳を源流とする尾白川から採取される。この水は、花崗岩層を長い年月をかけて浸透し、自然濾過された硬度約30の軟水である。ミネラル分が程よく抑えられ、pH7の中性という理想的な水質は、ウイスキー造りには完璧な条件を提供している。
日本名水百選にも選ばれたこの天然水は、白州蒸留所の敷地内でも湧出しており、訪問者は無料で汲んで持ち帰ることができる。この水こそが、白州特有の清涼感と上品な味わいを生み出す秘密なのである。
硬度(mg/L)
pH値
蒸留所標高
年間平均気温
世界が認めた品質 – 受賞歴と評価
主な受賞歴
ISC (International Spirits Challenge) 金賞
白州12年が6回受賞、白州18年が3回受賞
ISC 最高賞「トロフィー」
白州25年が国際的な最高評価を獲得
IWSC (International Wine & Spirit Competition)
白州シリーズが複数回受賞
SWSC (Scotch Whisky Society Competition)
森の蒸留所として世界的評価を確立
市場価格情報(2025年の価格)
銘柄 | 容量 | 定価 | 市場価格(2025年) | 状況 |
---|---|---|---|---|
白州 ノンエイジ | 700ml | 7,000円 | 13,000円〜18,000円 | 品薄・抽選販売中 |
白州 12年 | 700ml | 10,450円 | 25,000円〜35,000円 | 終売・希少 |
白州 18年 | 700ml | 35,200円 | 80,000円〜120,000円 | 終売・極希少 |
白州 25年 | 700ml | 176,000円 | 300,000円〜500,000円 | 限定・最高級 |
白州 SoD 2025 | 700ml | 16,500円 | 23,000円〜28,000円 | 抽選販売 |
購入方法・販売店情報
一般販売店
実店舗
- • イオン各店舗(不定期入荷)
- • やまや(ウイスキー専門コーナー)
- • ビックカメラ(酒類売場)
- • ドン・キホーテ(逆輸入品含む)
- • 百貨店(高島屋、伊勢丹等)
オンライン
- • Amazon(価格変動激しい)
- • 楽天市場(複数ショップ)
- • Yahoo!ショッピング
- • 信濃屋(ウイスキー専門店)
- • リカーマウンテン
抽選販売・限定販売
白州 Story of the Distillery 2025などの限定品は、サントリー公式サイトでの抽選販売が主な入手方法です。応募期間は通常数日間と短いため、公式サイトでの情報チェックが重要です。
現代の製造工程 – 伝統と革新の調和
白州蒸留所では、スコットランドの伝統的な製法を基礎としながらも、日本独自の改良を加えた製造工程が実践されている。特筆すべきは、木桶による発酵工程である。木桶発酵により、独特の香ばしさと複雑さが生まれ、これが白州の個性を決定づける要素となっている。
蒸留には、形状の異なる16基のポットスチルを使用しており、それぞれが微妙に異なる原酒を生み出している。直火蒸留により、麦芽の風味を最大限に引き出し、清涼感のある白州らしいキャラクターを形成している。
熟成は森の中の貯蔵庫で行われ、四季の温度変化と森の湿度が理想的な熟成環境を創り出している。この自然環境こそが、他では決して再現できない白州独自の味わいを生み出しているのである。
専門家・愛好家による評価
肯定的評価
「森の清涼感を完璧に表現した、日本ウイスキーの傑作」
「軽やかでありながら複雑、初心者から上級者まで楽しめる」
「ハイボールにすると真価を発揮する、夏の定番ウイスキー」
「世界的に見ても唯一無二の『森のウイスキー』」
専門家のコメント
「白州は日本の自然美を液体に封じ込めた芸術品」
– 国際ウイスキー評論家
「森の蒸留所というコンセプトを完璧に体現した逸品」
– ジャパニーズウイスキー研究家
「清涼感と複雑さの絶妙なバランスは世界屈指」
– ウイスキーソムリエ協会
森の声、そして新たな旅路へ
白州蒸留所への旅は、単なる観光ではなく、一つの精神的な巡礼であった。南アルプスの峰々に見守られ、82万平方メートルの原生林に抱かれたこの聖地で、私たちは佐治敬三の壮大なるビジョンが現実となった奇跡を目の当たりにした。
グラスに宿る清涼なる白州の調べは、まさに「森の蒸留所」が紡ぎ出す自然の賛美歌である。その透明感ある味わいは、都市の喧騒に疲れた現代人の心を癒し、忘れかけていた自然への畏敬の念を呼び起こしてくれる。
尾白川の清流が運ぶメッセージと共に、森の息吹を感じながら味わう白州は、私たちに「本物とは何か」を静かに語りかけている。それは派手さや華やかさではなく、自然との調和の中に生まれる真の美しさなのである。
「森は語る、時は流れる、そして白州は永遠に人々の心を潤し続ける」
— 蒸留所紀行編集部の格言
次回の「蒸留所紀行」では、どの聖地を訪れることになるだろうか。アイラ島の潮風か、ケンタッキーの大地か、それとも再び日本の山懐に隠された秘境か。ウイスキーの旅に終わりはない。今この瞬間も、世界のどこかで新たな「森の調べ」が静かに熟成の時を重ねているのだから。