|

「レッドブレスト蒸留所紀行」






レッドブレスト蒸留所紀行 – シングルポットスチルウイスキーの至宝



レッドブレスト蒸留所紀行

シングルポットスチルウイスキーの至宝


ヨーロッパコマドリの名を冠したアイルランドの珠玉

シングルポットスチルウイスキーの王者

アイルランドの緑豊かな大地で育まれたレッドブレストは、世界で最も愛されるシングルポットスチルウイスキーとして君臨している。その名前の由来となったヨーロッパコマドリ(Robin Redbreast)のように、春の訪れを告げる希望の象徴として、1939年の誕生以来、ウイスキー愛好家の心を温め続けてきた。

現在はミドルトン蒸留所で製造される这个珠玉のウイスキーは、発芽大麦と未発芽大麦を巧みにブレンドし、伝統的な銅製ポットスチルで3回蒸留することで生み出される。その製法は“プリーストボトル(司祭の瓶)”と呼ばれた1920年代から変わることなく、アイルランドウイスキーの真髄を体現している。


歴史への旅路 – ギルビー社から現代まで

1857

ギルビー社の創設

ロンドンのオックスフォード・ストリートとバーウィック・ストリートの角にある小さな地下室から始まったW&A ギルビー社。後にジンで有名になる同社は、当初ワインとスピリッツの輸入商として活動を開始した。

1861

ダブリン進出

ギルビー社はダブリンのアッパー・サックビル・ストリート31番地(現在のオコンネル・ストリート)に拠点を設立。140種類を超えるワインを取り扱い、700〜1,000樽のワインを保税倉庫に保管していた。

1903

レッドブレストの前身誕生

ギルビー社は「キャッスル・グランドJ.J.リキュールウイスキー」を発売。これがレッドブレストの直接的な前身となる。赤と白のラベルが特徴的で、後のレッドブレストのデザインにも受け継がれた。

1912

レッドブレスト誕生

1912年8月、「レッドブレスト J.J.リキュールウイスキー12年」として正式にブランド名が確立。鳥愛好家であったギルビー社会長により、ヨーロッパコマドリ(Robin Redbreast)から命名された。

1925

“プリーストボトル”の愛称

1920年代のアイルランドは政治的混乱と経済的困窮の時代。一般市民が高級ウイスキーを楽しむことは困難だったが、比較的裕福な聖職者たちがレッドブレストを愛飲していたため、“プリーストボトル(司祭の瓶)”の愛称で親しまれた。

1985

一時的な終焉

ギルビー社による最後のボトリングが行われる。ボウストリート蒸留所の閉鎖(1971年)により原酒供給が途絶え、ブランドは一時的に姿を消すことになった。

1991

華麗なる復活

アイリッシュ・ディスティラーズ社がブランド権利を取得し、レッドブレストが復活。ミドルトン蒸留所の最高級シェリー樽とバーボン樽で熟成された新生レッドブレストは、ウイスキー評論家マイケル・ジャクソンから「完璧に近い」と絶賛された。


製法の神髄 – シングルポットスチルの技術


ミドルトン蒸留所 – 現代の製造拠点

レッドブレストは現在、アイルランド・コーク州のミドルトン蒸留所で製造されている。この蒸留所は世界最大規模のウイスキー生産量を誇り、年間7,000万リットルものスピリッツを生産している。

仕込み水にはダンガーニー川の清らかな水を使用し、アイルランドの自然が育む純粋な味わいの基盤となっている。


ポットスチル用蒸留器:10基

グレーン用蒸留器:7基

容量:70〜80万リットル/基


レッドブレスト製造工程

原料

発芽大麦 40%
未発芽大麦 60%

蒸留

銅製ポットスチル
3回蒸留

熟成

シェリー樽
バーボン樽

完成

シングルポット
スチルウイスキー


マイクロ蒸留所 – 革新への挑戦

2015年、ミドルトン蒸留所の敷地内にマイクロ蒸留所が誕生した。これは元給油所兼倉庫を改造した実験的施設で、大規模生産では困難な小規模テストや新しい製法の開発を行っている。

2,500ℓ
初溜釜

1,500ℓ
後溜釜

11種類
蒸留方法テスト


熟成プログラム – 樽の芸術


オロロソ・シェリー樽

スペインのヘレス地方で作られる上質なオロロソシェリーの古樽を使用。レッドブレストに豊かなフルーツの甘みと複雑性をもたらす。特にルスタウ社との提携により、最高品質のシェリー樽を確保している。


アメリカンオーク・バーボン樽

アメリカン・ホワイトオークで作られたバーボン樽が、バニラやキャラメルの甘い香りを付与。シェリー樽との絶妙なバランスが、レッドブレスト独特の味わいを生み出している。


珠玉のラインナップ – 年代別コレクション


2025年最新価格情報

12年: 約8,700円
15年: 約9,500円
21年: 約17,600円
カスクストレングス: 約10,000円
ルスタウエディション: 約7,000円
27年: 約60,000円

レッドブレスト 12年

約8,700円

製法・熟成

  • オロロソ・シェリー樽熟成
  • バーボン樽熟成
  • 12年以上熟成
  • 40度、ノンチルフィルター

テイスティングノート

香り:濃厚なバニラ、ブドウやベリーのフルーティさ、奥にオークのスパイシーさ

味わい:ブドウとベリー系フルーツ、深いバニラの甘み、カスタードクリーム、キャラメルナッツ

評価・特徴

レッドブレストのスタンダードボトルとして、シングルポットスチルウイスキーの神髄を表現。昔ながらのアイルランドスピリッツを忠実に再現した、入門者から愛好家まで満足させる完成度の高い一本。

おすすめの飲み方:ストレート、ロック、少量の水割りで複雑さを楽しむ

レッドブレスト 15年

約9,500円

製法・熟成

  • オロロソ・シェリー樽熟成
  • バーボン樽熟成
  • 15年熟成
  • 46度、ノンチルフィルター

テイスティングノート

香り:12年よりも豊潤でリッチ、瑞々しい赤リンゴ、ベリー系フルーツ、カスタードクリーム

味わい:バニラの効いたフルーツケーキ、マジパン、バタートースト、枝付きレーズン

評価・特徴

レッドブレストのフラッグシップボトル。「レッドブレスト通」が21年よりもこちらを好む場合も多い、バランスの取れた傑作。重厚感とエレガンスを両立した味わいが魅力。

受賞歴:2006年「アイリッシュウイスキー・オブ・ザ・イヤー」受賞

レッドブレスト 12年 カスクストレングス

約10,000円

製法・熟成

  • カスクストレングス(加水なし)
  • ノンチルフィルター
  • バッチごとに度数が異なる
  • 限定リリース

テイスティングノート

香り:赤リンゴ、クリームブリュレ、ミルクチョコレート、時間とともにローズマリーやジュニパー

味わい:高い粘性、ドライでフルーティー、パッションフルーツ、マンゴー、バニラとミルクチョコレート

評価・特徴

レッドブレストの最も純粋な形。樽から直接ボトリングされた力強い味わいが特徴。加水により更なる複雑さが開花し、レッドブレスト愛好家には必須のボトル。

注意:高いアルコール度数のため、加水して楽しむことを推奨

レッドブレスト ルスタウ エディション

約7,000円

製法・熟成

  • 9-12年バーボン・シェリー樽熟成
  • ルスタウ社オロロソシェリー樽フィニッシュ
  • 1年間追加熟成
  • ファーストフィル・シェリーバット使用

テイスティングノート

香り:丸くアルコールアタック少ない、レーズン、アプリコット、バニラ、ジンジャー、シェリー酒

味わい:クリーミーでスパイシー、パイナップル、トロピカルフルーツ、シェリーとミルクチョコレート

評価・特徴

1896年創設のスペイン屈指のシェリーメーカー、ルスタウ社との協力により生まれた特別な一本。シェリー樽の影響が強く、レッドブレストらしさに独特のひねりが加わった逸品。

コラボレーション:ボデガス・ルスタウ社との特別な提携商品

レッドブレスト 21年

約17,600円

製法・熟成

  • 21年以上熟成
  • 最大25年の原酒を含む
  • マスターブレンダー厳選
  • 46度、プレミアム仕様

テイスティングノート

香り:マンゴー、パパイヤなどトロピカルフルーツ、アーモンド、レーズン、プラム、ワクシーな質感

味わい:柔らかなバニラ、上品なベリージャム、発酵バターのクロワッサン、ドライプラム、白桃

評価・特徴

レッドブレストの最高峰。世界で最も受賞歴の多いウイスキーの一つとして知られ、リッチな甘みとスパイシーさが絡み合う複雑な風味は芸術的。苦みや乾いた印象は皆無の完璧な仕上がり。

受賞歴:世界で最も受賞歴の多いウイスキーの一つ

レッドブレスト 27年 ルビーポートカスク

約60,000円

製法・熟成

  • バーボン樽・シェリー樽熟成
  • ルビーポートカスク後熟
  • 54.6度 カスクストレングス
  • 2020年リリース限定品

テイスティングノート

香り:複雑で層が厚い、トロピカルフルーツ、ブラッドオレンジ、ダークベリー、白桃、マンゴー、バニラエッセンス

味わい:熟したリンゴとベリー、ダークチェリー、グァバ、マンゴー、ミントのハーバルさ、ザクロとカカオのビター

評価・特徴

レッドブレストの個性という個性が際立つ芸術的なボトル。27年の長期熟成にルビーポートカスクの魔法が加わり、これまでにない複雑性と深みを実現。コレクターズアイテムとしても価値が高い。

限定品:世界限定リリース、コレクターズアイテム

レッドブレストへの愛

レッドブレストは単なるウイスキーではない。それはアイルランドの魂であり、職人の誇りであり、時を超えた芸術である。ヨーロッパコマドリの名を冠したこのウイスキーは、春の訪れを告げる鳥のように、飲む人の心に温かな希望と喜びをもたらしてくれる。

1939年の誕生から現在に至るまで、レッドブレストは常にシングルポットスチルウイスキーの最高峰として愛され続けてきた。ギルビー社の創設から始まり、”プリーストボトル”として親しまれた時代、そして現在のミドルトン蒸留所での復活まで、その歴史は波乱に満ちているが、変わらぬ品質への追求が今日の名声を築いている。

発芽大麦と未発芽大麦の絶妙なブレンド、3回蒸留による滑らかな口当たり、そしてオロロソシェリー樽とバーボン樽の完璧な調和—これらすべてが組み合わさって、世界中のウイスキー愛好家を魅了するレッドブレストの魔法が生まれている。

「レッドブレストを味わうことは、アイルランドの緑の大地を歩き、
ケルトの古い物語に耳を傾け、職人たちの手仕事に触れることである。」


蒸留所紀行

世界のウイスキー蒸留所を巡る旅

© 2025 Distillery Journey. すべての情報は2025年時点のものです。


類似投稿

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です